1万円で高音質! 50BM8シングル真空管アンプ (設計編)

2003年11月23日改定

(はじめに)

 オーディオマニアではない人にも手軽にあげることのできるアンプを!というコンセプトで、
「低価格」「コンパクト」「安全」「高音質」という欲張ったアンプを作ることにしたいと思います。
マイナス電源ではありませんが、ユニバーサルアンプで得たノウハウをふんだんに盛り込みたいと思います。
うまくいったらご喝采を!

 

(目標)

 具体的な目標値を下記のように決めました。

・低価格:全部合わせて1万円未満とします

・コンパクト:とりあえず簡単に持ち運べるサイズ、ということにしておきます

・安全:初心者が安心して使えるように、ということで、感電の危険性のない構成にします。
    真空管を触って火傷しないように。。。というのは無理かな。

・高音質:安価な小型のスピーカでコンパクトCDを聴くような用途を想定し、小型でも低音を
    ダンピング良く再生させること、ステレオの定位感が十分に得られるように心がけます。

 

(部品選定) −−低コストを実現するために

まず、一番安くできるアンプとなると、「50BM8のシングルアンプ」ということで間違いないでしょう。

真空管も増幅段と出力段がセットになっていながら安く、ヒータトランスを省略でき、音にも定評があります。

これを前提に、低コストを実現するために、いろいろと考えながら部品選定を行いました。

・真空管(50BM8)は、クラシックコンポーネンツで900円で入手しました。
季節によっては500円程度でキャンペーンをしていることが多いので、さらに安く買えるかもしれません。

・安価な電源トランスを使用する

 一番コストパフォーマンスの高い電源トランスは、100V:100V、または100V:200V程度の絶縁トランスです。
いろいろ調べまわったところ、春日無線の7Z40WCDがもっとも割安のようです。
40VAあり、1次側の90V端子を使えば、245V AC程度まで使用可能です。

 安価な小型のトランスを使いながら高音質を得るためには、出力によっても極力所要電流が変化しないような回路にするか、
定電圧回路を用いて、トランスの電圧が変化しても、真空管への供給電圧が変動しないように工夫します。

・安価な出力トランスを使用する

 この部分はケチっただけ音質が落ちるといわれていますが、今回は、コスト・サイズの兼ね合いで東栄無線のT850-7K(850円)とします。

 このような安い小型のトランスを使用しても、下記の工夫で良い音を得ることができます。

 ・出力管の内部抵抗値を下げる(NFBを多くかける)と、小型のトランスでもリアルな低音が得られる
 ・安いトランスでは位相回転が大きいので、ループ帰還(出力トランスの二次側から初段へのNFB)は避ける。

・コンデンサ・チョークコイルをケチる

 通常のシングルアンプでは、電源部のリップルを大きく下げるために大容量のコンデンサ、またはチョークコイルを用います。
しかし、それにはコストがかかりますし、場所も取ります。
安価な半導体で定電圧電源を作れば、コンデンサやコイルなしに電源のリップルを下げることが可能です。

半導体・抵抗・半導体類、ユニバーサル基板などは、千石電商で安く買えます。
ただし、残念なことに高電圧(50Vを超える)の電解コンデンサは置いていません。

・シャーシは普通に

 100円ショップのダイソーにいろいろと使えそうなものがあります。小型のまな板やステンレスのトレー類、CDケースetc...

 いろいろと考えましたが、今回はシンプルに小型のアルミシャーシを加工して作ります。
 後で加工がし難いと作り直しが発生することもありますので。。。

 

(回路図)

 

なかなか斬新だと思います。
最初はこのような回路を考えていたのですが、これだと普通っぽくて楽しみがないかな...
やはり安くても、今までのアンプにはない何かが欲しい、と考え、マイナス給電型コンパチブルシングルアンプ
で得られたノウハウを投入しました。

・多量のPK帰還
  ・小型・低価格のOPTでも豊かな低音が得られます
  ・真空管シングルアンプとしては、歪を非常に小さくできます
  ・音の輪郭がハッキリとし、前に出てきます
  ・ただし、電源のリップルに敏感になるというデメリットがあります

・初段にFETを使用し、50BM8の3極部はカソードフォロアとして使用
  ・高ゲインのFETを使用することで、PK帰還の効果を大きくできます
  ・高域特性が伸び、音の立ち上がりがハイスピードになります

・信号回路にコンデンサを排除した全段直結回路
  ・色付けのない音色
  ・音の立ち上がりがさらに高速化
  ・超低域の特性向上
  ・ただし、温度の影響などで動作ポイントが変化するのが心配なので、FETの差動回路を利用した
  DCサーボ(AOC:Auto Offset Control)回路を追加し、動作の安定性を確保しています。

・PK帰還では通常使用する直流カットのコンデンサを省略
  ・低域で正確で安定したNFBがかかる
  ・初段カソード抵抗値が小さくなる→利得が高くなりPK帰還の効果増大

・B電源を簡易定電圧回路で安定化
  ・安い電源トランスでも、全音域に渡ってレギュレーションの良い電源供給が可能
  ・大型のコンデンサやチョークコイルがなくてもリップルを大幅に除去できるため、省スペース化が可能

・左右独立の定電圧回路
  ・クロストークが極小となり、リアルな音場感が出るはずです

・出力段のロードラインは、通常の6BM8は5kΩが多いのですが、トランスに流れる直流電流を少なく、
そして、DFを少しでも高くするために、7kΩで考えています。

・ポータブルCDやMDのヘッドホン端子を直接接続する用途を想定し、入力Volumeは省略します。音質上もその方が有利です。

 

(実装)

 多分作りながら考えると思いますが、下記のようなポイントには注意したいと思います。

・ハム対策のない安価な電源トランスと出力トランスを使用していますので、出力トランスは電源トランスから
離れた位置でシャーシに垂直に設置することでリーケージフラックスを最小限にします。

・左右対称のシンプルなデザインにしたいです。

 

 

(物品リスト) (案)

物品種別 購入店 メーカー 品名 数量 単価 小計 仕様
真空管 クラシックコンポーネンツ RCA 50BM8 2 857 1,714  
MT管ソケット 瀬田無線     2 100 200 MT9pin
FET 千石電商 東芝 2SK373 2 29 57  
東芝 2SJ105-GR 4 29 114  
出力トランス 東栄無線   T850-7K 2 850 1,700 7K-5K-3K: 8Ω-4Ω, 2W, 70mA
電源トランス 春日無線   7Z40WCD 1 1,630 1,630 1次:E 0-90-100-110 2次:0-6.3-170-200-220 (AC150mA), バンド, 70x70x64
電解コンデンサ 瀬田無線 Elna 33μF 350V 1 200 200  
47μF 350V 2 300 600  
マイラーコンデンサ 千石電商 東信工業 2AUMS104K 2 19 38 0.1μF100V
ファーストリカバリーダイオード 千石電商 三洋 DFH-10TG-KB4 4 19 76 600V1A <150ns
  千石電商 日立 HZ36-2 7 19 133 35.3〜36.8V/0.5W
HZ24-2 1 19 19 23.6〜24.7V/0.5W
HZ16-2 1 19 19 15.7〜16.5V/0.5W
定電流ダイオード 千石電商 石塚電子 E-501 3 86 257 0.5mA 100V 300mW
トランジスタ 千石電商 東芝 2SA1924 4 48 190 400V 10W(1.5W)
固定抵抗 千石電商     2 57 114 10W セメント(Rk3)
    2 38 76 3W セメント(Rsg)
    4 45 180 3W 酸化金属皮膜(Rnfb)
    1 29 29 2W 酸化金属皮膜(Rb)
    12 19 229 1/4W金属被膜(Rd1,Rs1,Rg1,Rk2,Rsb,Rs)
ユニバーサル基板 千石電商 サンハヤト ICB-288 1 71 71 汎用片面 紙フェノール 2.54mmピッチ サイズ:72×47mm
放熱板 千石電商     0 38 0  
アルミシャーシ エスエス無線 リード S-31 1 630 630  
RCA入力端子 千石電商     2 29 57  
SP出力ターミナル 千石電商     4 38 152  
ヒューズBOX 千石電商     1 19 19  
ヒューズ 千石電商   F 1A 1 19 19 1A×2
電源SW 千石電商     1 162 162 2PトグルSW
ACケーブル(2P) 千石電商     1 95 95 70W用1.9m
      合 計     8,783  
            9,222 (消費税込み)

 


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