カソードフォロア段追加の実験
(はじめに)
チューニングの道で検討した結果、現回路は、若干高域特性の改善の余地があると考えました。
その対策として、カソードフォロア段の追加がもっとも大きな効果が期待できるようでしたので、とりあえず高耐圧のトランジスタ
を使用してエミッタフォロア段追加の実験を行い、結果が良ければ真空管によるカソードフォロア段を追加することにしました。
(回路)
元の回路に対して、カソードフォロア追加回路のように変更しました。
元の回路に対して、片チャンネルあたり、高耐圧トランジスタ(2SC5460)の追加、カソードフォロア(エミッタフォロア)段用抵抗
の追加、プラス電源リップルフィルタ抵抗値の変更、NFB補償用コンデンサの容量変更だけです。
2SC5460は1個180円、実装も、トランジスタを空中配線すれば、シャーシスペース的にも全く苦労なく追加可能です。
(得られた効果)
まず、6V6GTを挿して、視聴してみると、明らかな変化がありました。
今までは、6V6GTだと、柔らかい響きだったのが、カチッと引き締まったハイスピードの音に変わり、音の明るさ、スピード感が
明らかに向上しました。
同時に、利得が伸びたためか、低域の伸びも良くなり、残留雑音も下がりました。
また、6F6G、6550など、高域が弱かった球を挿しても音の艶が出るようになりました。
シンバルの音の華やかさ、人のブレスなどの生々しさなど、明らかに良い面が現れました。
一方、もともと高域の伸びがよく、ハイスピードだった球(6BQ5,KT66,8417など)については、それほどの変化は感じられません
でした。残留雑音ももともと良い値でしたが、今までより減少はしませんし、逆に音に硬さが出ている感じもします。
全体に球の個性は少なくなり、少しトランジスタのアンプ寄りに近づいたともいえますが、音の感じとしては良い方向になったと
感じられました。
(問題点)
Gmの高い球については、発振してしまうことがあります。
とにかくひどいのが6DQ6、これは元回路でも少し不安定な感じがしていたのですが、カソードフォロア段を入れると、
すぐに発振してしまいます。
NFBを少なくすれば何とか使えますが、音も硬くて使う気がしません。
また、出力を上げすぎて、クリップした際に、発振する球もあらわれました。
8417、6BQ5などがそうです。
実験を行う前までは、数百kHzになると、高域の落ちる箇所が2箇所発生し、最終的に位相が180度進んでしまうことが心配
だったのですが、おそらくそれが原因です。使用したトランジスタのhfeが低く、高域の落ちる2箇所の周波数が近くなって
しまったのだろうと推測しています。もしかしたらもっとhfeの高いものに変更することが解消されるかもしれません。
1つ気になっているのは、クリップした際に、出力管に100V単位の大きな過大入力が入ることです。
これにより、出力管のスクリーンに大きな電流が流れ、ツェナーダイオードや出力管に過負荷がかかる危険性があります。
これは元回路でも発生する現象なのですが、もとのドライブ段のインピーダンスが高いので、グリッドに電流が流れ出す
ことで、ドライブが弱まり、過大入力はある程度に収まります(と勝手に思っています)が、カソードフォロアでは、グリッド
電流が流れ出しても無理やりドライブしてしまうので、ツェナーダイオードや出力管を傷めやすくなると思われます。
(まとめ)
カソードフォロア段の追加は、利得の向上(NFB量の増大)・高域特性の改善に大きな効果が得られました。
ただし、自由にいろいろな球を差替えて使用することを目的とする本アンプへの適用は、安定度の面で問題が多いと結論づけました。